爪を噛む、指を食む
悲しいときに悲しいと言えないことが、哀しい。
自分だけじゃないことなんて知っているのだ。
知っていたところで、この憤りをぶつける先もなく。
自責したところでどうにもならず、勿論他人のせいであるわけがない。
せめてこれが選択なら。
後悔ができた。反省ができた。
消えない過ちでも、赦されるかも知れなかった。
自分の選択なんかじゃない。
あたえられたのは、枷だ。自分の意思ではなく、内包し、捨てることもできず。
皆が咎める。
わたしが望んだわけがないのに!
甘えだというなら替わってくれ、お前の体にまとわりついたそれとはわけが違うんだ。
それはお前の選択によって……
せめてひとつくらい、叶えさせてくれ。
いや、叶える。
望まぬものを与える奴を頼りにしたところで、どうせ同じだ。
欲しいのだ。
ほかのなにを犠牲にしたって。
すべて贄として捧げることを。
覚悟しろ。
戻れなくなることを。
ひとつ以外を切り捨てるのなら。
泣いて、吐いて、這いつくばって
どんな手段を使ってでも。
踏みにじれ。裏切りを躊躇うな。
只、ひとつだけのそれが欲しい。
幾千の星で満足できないのならば。
月を捕らえよ。
ひとつきり、碧く輝くひかりを抱け。