既望のきみ

長いこと夜にいるワケあり20代前半の徒然

爪を噛む、指を食む

悲しいときに悲しいと言えないことが、哀しい。

自分だけじゃないことなんて知っているのだ。
知っていたところで、この憤りをぶつける先もなく。
自責したところでどうにもならず、勿論他人のせいであるわけがない。

せめてこれが選択なら。
後悔ができた。反省ができた。
消えない過ちでも、赦されるかも知れなかった。

自分の選択なんかじゃない。
あたえられたのは、枷だ。自分の意思ではなく、内包し、捨てることもできず。
皆が咎める。

わたしが望んだわけがないのに!

甘えだというなら替わってくれ、お前の体にまとわりついたそれとはわけが違うんだ。
それはお前の選択によって……

せめてひとつくらい、叶えさせてくれ。

いや、叶える。
望まぬものを与える奴を頼りにしたところで、どうせ同じだ。

欲しいのだ。
ほかのなにを犠牲にしたって。
すべて贄として捧げることを。

覚悟しろ。
戻れなくなることを。
ひとつ以外を切り捨てるのなら。

泣いて、吐いて、這いつくばって
どんな手段を使ってでも。
踏みにじれ。裏切りを躊躇うな。

只、ひとつだけのそれが欲しい。
幾千の星で満足できないのならば。

月を捕らえよ。
ひとつきり、碧く輝くひかりを抱け。

既望のきみ

11月に仕事を辞めた。

仕事を辞めるのはこれがはじめてという訳ではないし、どちらかと言えば転職回数の多い方だ。特に理由もなく辞めてきた。我慢が足りないのである。

ゆとり云々は関係なく、これは自分が人間的に未熟だからに他ならない。

ただ、今回は今までとは違う。確実に自分の人生においてここが分岐点になるだろう。

辞めたけれど、好きな仕事だった。辞めたからこそ、好きという気持ちを再確認したような気もする。

ただ、そのまま戻りたいのかと言われればそうではない。

使われる側のままでは手に入らないものが欲しくなったからだ。

 

短期間に、様々な変化があった。

果たしてそれはプラスなのか、マイナスなのか。現時点では計りかねる。どちらになるのかは自分自身の選択次第だ。

この2か月ほどの無職期間を無駄だとは思わない。無駄にしない。

次にやることは決めたし、その先やりたいことも朧げにではあるが考えている。

選択肢をすぐに絞る必要もない。視野が狭くなるし、すべて決定してしまうには経験も知識も圧倒的に足りていない。

しかし、自分が尊敬できない人間になにか言われたとしても心に響くはずがない。

説教などされても腹しか立たない。

上司や目上の人間なら、長く生きているだけ何かしら学べるかも知れないが……

他人と比べることで自分の虚栄心を満たしている人間に何を学べばいいというのか。

反面教師にはなるかもしれないが、そんなことでストレスを溜めるのも馬鹿げている。

自分のペースを他人にとやかく言われたくないのは、皆同じだろう。

張本人が人生の展望もなく、尊敬できる部分がないなら尚更ではないだろうか。

たとえ今はよくとも、それをこの先も維持するための努力など見えないやつに、生きる理由も目標もなくただ日々を消費しているだけの輩に、否定されるような覚えはない。

だから今は離れられてよかったと思う。

当たり前だが、余計なことで悩むことはなくなった。

ただ、離れるまではそれらのストレスに気付かないようにしているのかも知れない。

離れると何も残らず、自分がひとりきりということに気付いてしまうから。

自分は、自分が思うよりずっと空っぽだった。

依存は、最中にいるときは心地よいのだ。それ以外のすべてを失っていることにも気づかず。

それを失ってはじめて、自分は何も持たないことを知る。

だが、持たないということは限りなく自由だ。

わたしはそれを知ることができた。何も持たないけれど、手に入れたのだ。

 

本当に欲しいものはなんだろうか?

 

どうでもいいもので自分の人生を埋めてはいけない。

"それ"に出会った時、迎えられるスペースを空けていなくてはならない。

きっと、最終的にも一番欲しいのは金銭的な余裕だ。

金銭的に余裕であれば、精神的な余裕が生まれる。身を持って知っている。

やりたいことは山ほどある。大抵のことは、お金で解決できてしまう。

本当に欲しいそれも、人よりお金があれば手に入ると思う。

それを虚しいと誰かが言っても、手に入らないよりはずっといいのだ。

 

傷を舐めあうためのコミュニティはもういらない。ぬるま湯には浸からない。

誰にも分け与えられないものが欲しいと思った時から、きっと決まっていた。

こうなることが。

本当の心など、自分以外知る由がないのだ。

だから、心まですべて手に入れたいとなど思わない。

傍から見て、誰もがきみをわたしのものだと認識すればそれでいい。

 

自分の力で、手に入れてみせる。

誰もが無理だと口を揃えて言った、既望のきみを。